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2010年 3月 5日発行

みはらん メルマガ:三原市ふるさと情報発信事業推進協議会

【臨時号の掲載内容】
ふるさと三原への手紙 ・・・ 加納達則さん

ふるさと三原への手紙 ・・・ 加納達則さん
〜イタリアを中心に世界で活躍する現代美術アーティスト〜
プリモピアット 第二幕<リゾット お米料理>

 

 今回は、プリモピアットのお米を使った料理について考察してみます。
 我が故郷三原の海の幸、山の幸とともに食べたお袋のおむすびの味に、敵うもの無し。
 まず、そのことをここで明言しておきたいと思います。

 そこで、今回はイタリアの代表的なプリモピアットであるリゾットです。
 日本で有名なのは、ミラノ風リゾットなどがあります。真っ白なテーブルクロスの上にワイングラス、フォークとナイフの銀色を侍らせて、そして白いジノーリ(a)の磁器の上に乗って登場する。
 芳気の向こうに金色(b)に輝くリゾットは、ミラノスカラ座のオペラの舞台です。まさに、今流行のミニマリズムの舞台装飾です。
 サフラン風味ミラノ版固茹でおじや。と訳せばある程度誤解にほど遠いが、正解に近い答えではないかと思われます。
 リゾットには色々な種類があります。山海の珍味で味付けし、洗練されたレシピは数えきれません。カルチョフィー(c)、ポルチーノ(d)、アスパラ、トレビジャーナ(e)...。変わり種では、苺などもあります。
 ここでイタリアを連呼していては、東京まで三原オリジナルブランド(f)を売り込みに行った友人に申し訳ありません。
 そこで、三原特産でリゾットを創作するなら、もちろん瀬戸内海、田浦タコのリゾットでしょうか。もちろん、タコの炊き込みご飯がベースにあるのは明々白々であります。
 親愛なる読者の皆さまには、もちろん!米はリゾット用をお使い下さい。料理全集の既成概念に捕われたくない方にはお勧めです。

 この辺りは少々手前味噌ですが、そのお味噌がイタリアでは鐘に変わります。イタリアでは、我が街の鐘楼と言います。どんな割れ鐘あろうと、我が街の鐘楼の音は、世界に冠たるものなのです。
 ボローニャには世界に冠たる「アレ,ソレ!」がごまんとあります。隣町のモデナさんには、五万三千と言えば、その真向かいのフェラーラさんちは、五万八千と豪語しています。昔から、笑い話の主人公にされがちな関係ですが...。
 それだけに一昔前まで、国家単位で張り合っていた名残でしょうか。
 極論をいえばお袋のおむすびは世界に一つしかない、の一言につきます。信じることです。されば我々の迷える魂は救われるのです。

 日本人の海外生活が長くなると食生活は…。ある程度のことは我慢と諦め、または発明工夫でしのいで行きます。そこには我が民族の精神と、胃袋の涙ぐましい葛藤が見られます。
 例えば、無漂白のパンとビールでぬかみそもどきを作るとか。日本からのお土産に頂いた納豆を丹念に増殖するとか、それはそれは涙ぐましい限りです。
 しかし、根源的なところが絡んでくると、お手上げ、さじを投げる,タオルを投げるということになります。投げ出せない人は、得てして精神不安定になりがちですが...。
 留学生当時、よくこんな外国人(イタリア人以外)を見ました。
 ちょうどこの時分にパリでは、我が同胞が人を喰った様な話もありましたっけ。

 ここで取り上げるべきは、日本に関係の深いミラノです。
 決定的に異なるのが、この米の種類なのです。
 何故ミラノと日本、米、この数式が成り立つか?80年代という係数を入れて頂ければその当時、既に10数件も日本人経営(g)の和食レストランでにぎわっていた街ミラノと日本との接点が現れてきます。
 余談ですが、当時から既にミラノ―成田の直通便はありました。

 リゾットは、あのネオリアリズムの名画『苦い米』で作らないと、本来のリゾットは完成されません。本題から外れますが、力説したいのは、作品のヒロインのシルバーナ マンガノ(j)は残されている画像で見る限り、当時のハリウッドのヴィーナス達を凌駕しています。是非ともDVDでご覧下さい。
 この米を使ってお袋の味を再現しょうものなら、苦い経験をしてしまいます。
 余談ですが、映画のタイトルの「Riso amaro」は苦い笑いとも訳せます。
 リゾット用の米で炊いたご飯は、なんともパサパサして、チャーハンくらいにしかなりません。またニオイ、いや特有の風味もあります。
 これは国の事情を察して尚かつ、好みの問題と言うべきかもしれませんが...。
 そこでバブルの企業戦士は、精神と胃袋の均衡を保つ必要に応じて、そこはあの『苦い米』の舞台ともなったミラノ近郊の水田地帯、ヴェルチェリにササニシキ、コシヒカリを持ち込んだのです。その名前も、イタ光、イタ錦。
 どこかの相撲部屋で活躍する素晴しい外国人力士のようなネーミングです。
 ある時、ミラノ在住の友人でJAL家庭(ご主人が貨物屋さん,奥さんが元キャビンアテンダント)でごちそうになった時です。
 只ただ、一途に家庭の味でした。それくらいそのご飯は故郷に近かったように思います。
 私は緩みかけた涙腺の向こうに、光と錦を見て故郷を思い浮かべましたが...どちらの光明がヒカリかニシキか残念ながら区別できませんでした。
 その時は、1か月のヨーロッパ貧乏旅行を終えてボローニャへの帰途でありました。
 ついつい居心地の良さと家庭の味に甘えて長居をしてしまいました。その節は大変お世話になりました。sugikiご夫妻,ありがとうございました。今から考えれば、その時がかなり不安定であったように思えます。
 実際、その年から3年半帰国しませんでした。
 また、この米が、当時ミラノ在住の企業戦士諸兄のご家族を慰めたのは、疑いの余地がありません。ここに根強い日本人のご飯に対する執着があります。
 まさに根源的なものです。
 そこに既成概念が生まれてきます。私の制作生活上の怠惰に次ぐ大敵です。これと同居するのは大変スリリングです。
 多分、外国生活をしているからある程度は許されるのかもしれません。
 そして、自分がアーティストであるということが大きく関係しているのは事実です。
 何々はこうあるべきだ!このたぐいの考えが全ての芸術に対して感性を圧し曲げてしまいます。そして偏見を生み、差別に繋がって行きます。
 固定されてしまった考えの中でしか発想は生まれてきませんし、美味しいものも食べ逃してしまいます。美しいものも見落としてしまいます。

 驚きの無い生活は退屈です。

 芯のある固茹でご飯もおいしく頂ける柔軟性を持てば、デザートに出てくるお米のケーキも、おっとり笑っていただけると思います。

 今回、またしても汁物を落としてしまいました。それは次回にオーダー致します。
 ミネストローネ、野菜のスープ、これにもナカナカ隅に置けない存在です。
 鍋のふたは、ほどよく煮詰まった野菜の香りを吹き上げています。
 次回、プリモピアット第三幕に続き。

(a)リチャード ジノーリ:イタリア、フィレンツェに本店を置く由緒ある磁器メーカー。
(b)サフラン:香辛料。黄色の染色効果があります。
(c)カルチョフィ:食用のアザミ花弁の芯と花びらの付け根部分を食用にします。
(d)ポルチーニ:自然発生の茸。未だに養殖不可能です。乾燥された物が日本にも輸入されています。イタリア産の物は大変高価です。
(e)トレビジャーナ:独特の苦みと渋い赤紫色の野菜。
(f)三原ブランド:みはらんメルマガ内に詳しく紹介されています。三原の誇る世界に冠たる逸品です。
(g)現在、イタリアでは和食ブーム。かなりの数の中華かレストランは、日本料理、すし、の看板と掛け替えています。中身はほとんどアジア風和食です。日本人資本の店は、ほとんどないのでは...と危惧しています。中にはAsahiのロゴマークをほとんどそのまま使って、日本の国旗を毎日立てているレストランがあります。アトリエの行き帰りにこの景色とぶつかりますが、旗の向こうに中国人移民の現実的な素顔が見えてきます。

加納 達則 (1954年生 三原市糸崎出身)
http://www.tatsunorikano.info


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