〜イタリアを中心に世界で活躍する現代美術アーティスト〜
第4幕 セコンドピアット 第1景
肉食獣のための肉 その1
レストランで、さていよいよセコンドピアット(メインデッシュ、主菜)に入る準備ができたところで、胃袋がギブアップしている状態を、図らずも経験したことがあります。
私だけではないと確信します。「とにかく量が凄い!」と言われる方々が大半と思われます。
そんな方のために一言。
アンティパストから、全てを食べていく理由はないのです。
ダイエットをしている、うら若き女性がパスタかセコンドピアット、さらにドルチェ(甘い物、ケーキ)を食べない情景を幾度も見かけました。
何を食べたいのか、良く考えてから欲張らずにオダーしましょう。
アンティパスト(前回アンティパスタを参照)とサラダ、フルーツ、カフェ、これで充分楽しめると思いませんか?
食事は胃に詰め込むより、楽しむ方を優先してはいかがでしょうか。
それでも食いしん坊の貴方に、今月からはセコンドピアットに入ります。
大きく分けてセコンドピアットには、肉料理か魚料理に分けることができます。
今回は、肉料理のセコンドピアットについて考察してみます。
イタリア料理のセコンドピアットは、数多くプリモピアットと同じ位、地方色豊かでヴァリエーションがあります。
今回は、肉料理に肉迫して行きます。
ここには私達日本人の好む、趣向を凝らした精密な肉と、牧畜農耕文化の中で育てられた肉の違いが確実に現れています。
肉の味を最も簡単に味わえる手段として、ステーキは最短コースと思われます。
そこで登場してもらうのが、ビステッカ アッラ フィオレンティーナ(フィレンツェ風ビーフステーキ)。一度は挑戦して頂きたい、肉食獣のためのビーフステーキです。
その厚さは大人の指三本(もちろんイタリア人男性)を重ねた程度と言われるTボーンステーキで500g以下では調理できません、とウェイターに丁寧に断られます。
ご心配無く、脂が少ないだけ胃にこたえないので食が進みます、量も入ります。
最小限の500gなら、骨を外せば正味300g程度です。
味付けは、塩、こしょう、お好みでレモン、ただそれだけ。後は、フォークとナイフ、それと骨までしゃぶっちゃう肉食獣の闘魂です。
あのサバンナで獲物にかぶりついているライオンを想像して頂ければ、その状況が浮かんでくると思います。
焼き方についてはお好み次第で、やはり炭火か薪の置き火が最適かと思われます。
牛の種類、この辺りは私の守備範囲外なので、触れる訳にはいきませんが、和牛でないことだけは確実です。
やはりイタリアの国産牛で、トスカーナ産・ピエモンテ産は有名ですが、最近ではアルゼンチンからの輸入物が一部で脚光を浴びています。
むしろ印象としては、人工的に作られた国産メタボ牛に比べて、野性的な自然の味を感じます。
大きな違いは、日本人が珍重する霜降り肉ではないこと、脂の乗った軟らかいと言う形容とはほど遠いでしょう。
最初のインパクトは、なんて肉だ!?と思ったくらいです。
しかし、そのまえにプリモでパスタを食べているはずが、スムーズに入って行くではないですか。トスカーナの赤 ワインが美味いせいか?
胃にもたれない、なるほど!感心しました。
次回 肉食獣のための肉。その2に続きます。
加納 達則 (1954年生 三原市糸崎出身)
http://www.tatsunorikano.info
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